秋の夜のあはれは誰も知るものを
我のみと鳴くきりぎりすかな
- 歌の意味
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秋の夜のしみじみとした哀れは誰もが知っているのに、自分だけが知っているかのように鳴くきりぎりすよ。
- 鑑賞
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巻第五 秋歌下 329
詞書は前の歌に続き「題しらず」
秋の夜のしみじみとした哀れは、誰もが知っていることなのに、まるで自分だけがそれを知っているかのように鳴くきりぎりすよ、と詠む。鳴き続ける虫の声を、哀れを独り占めしているかのようだととらえ、軽い咎めの形で、その声の切実さを描いている。
作者の「藤原兼宗朝臣」は藤原忠親の子である。のちに大納言に至った。
初句「秋の夜の」は、二句の「あはれ」にかかる。
二句「あはれは誰も」の「あはれ」は、しみじみと心を動かされる思いである。「誰も」は、すべての人が、の意である。
三句「知るものを」の「ものを」は逆接の接続助詞で、知っているのに、の意である。
四句「我のみと鳴く」は、自分だけが知っているかのように鳴く、の意で、虫を擬人化している。
結句「きりぎりすかな」の「きりぎりす」は今のこおろぎにあたる虫で、「かな」は詠嘆である。次の次の第三百三十二首もきりぎりすを詠む。
きりぎりす:今のこおろぎにあたる虫
- 作者
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藤原兼宗
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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虫の音は浅茅がもとに埋もれて 秋は末葉の色にぞありける
- 次の歌
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さまざまの浅茅が原の虫の音を あはれ一つに聞きぞなしつる