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さまざまの浅茅が原の虫の音を
あはれ一つに聞きぞなしつる

歌の意味
浅茅が原でさまざまに鳴く虫の声を、どれも同じ一つの哀れとして聞き取ったことだ。
鑑賞
巻第五 秋歌下 330

詞書「虫声非一といへる心をよみ侍りける」
 「虫声非一」、すなわち虫の声は一つではないという題で詠んだ歌である。浅茅が原ではさまざまな虫がそれぞれの声で鳴いているが、聞く自分には、それがみな同じ一つの「あはれ」として聞こえた、と詠む。題が多様さを示すのに対し、聞く心の側ではそれが一つになると転じた点に工夫がある。
 作者の「左近中将良経」は摂政九条兼実の子である。のちに摂政太政大臣に至り、新古今和歌集の仮名序を書いた。書にも優れ、小倉百人一首にも歌が採られている。

 初句「さまざまの」は、題の「非一」を受け、虫の声の多様さを示す。結句近くの「一つ」と対をなす。
 二句「浅茅が原の」の「浅茅が原」は浅茅の生い茂った野原である。本巻の第三百二十八首の「浅茅がもと」と同じく、浅茅に鳴く虫を詠む。
 三句「虫の音を」は、聞く対象を示す。
 四句「あはれ一つに」は、すべてを同じ一つの哀れとして、の意で、初句の「さまざま」と多と一の対をなす。
 結句「聞きぞなしつる」の「聞きなす」は聞いてそのように受け取る意である。「ぞ」は係助詞で、完了の助動詞「つ」の連体形「つる」で結ぶ。

ききなす:聞いてそのように受け取る
あさぢがはら:浅茅の生い茂った野原
作者
藤原良経
出典
千載和歌集
前の歌
秋の夜のあはれは誰も知るものを 我のみと鳴くきりぎりすかな
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夜を重ね声弱りゆく虫の音に 秋の暮れぬるほどを知るかな