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雪ならば籬にのみは積もらじと
思ひとくにぞ白菊の花

歌の意味
もし雪であるなら、籬にばかり積もりはしないだろうと考えて、ようやく納得するのだ、これは白菊の花だと。
鑑賞
巻第五 秋歌下 348

詞書「籬菊如雪といへる心をよみ侍りける」
 「籬菊如雪」、すなわち籬のそばの菊が雪のようだという題で詠んだ歌である。籬に白く積もったものを雪かと思ったが、もし雪ならば籬の上ばかりに積もるはずはないと考えて、ようやくそれが白菊の花だと理解した、と詠む。白菊を雪と見誤るという見立てを、理屈で解きほぐす形で示している。
 作者の「前大僧正行慶」は白河天皇の皇子である。園城寺の僧で、大僧正に至った。
 本巻の第三百四十六首から第三百五十首までの五首は菊の歌で、第三百四十六首第三百四十八首第三百五十首は結句に「白菊の花」を置く。

 初句「雪ならば」は、もし雪であるならば、と仮定する。題の「如雪」を受ける。
 二句「籬にのみは」の「籬」は竹や柴で粗く編んだ垣根である。「のみ」は、ばかり、の意で、籬だけに、と限定する。次歌の第三百四十九首も「籬の菊」を詠む。
 三句「積もらじと」の「じ」は打消推量の助動詞で、積もりはしないだろう、の意である。
 四句「思ひとくにぞ」の「思ひとく」は考えて理解する意で、「とく」に雪が溶ける意を掛ける。雪と見えたものが、考えるうちに溶けるように菊と知れる。「ぞ」は強意である。
 結句「白菊の花」は体言止めで、正体を最後に示す。本巻の第三百四十六首第三百五十首と同じ結句である。

おもひとく:考えて理解する意で、「とく」に雪が溶ける意を掛ける
まがき:竹や柴で目を粗く編んだ垣根
作者
行慶
出典
千載和歌集
前の歌
白菊の葉に置く露に宿らずは 花とぞ見まし照らす月影
次の歌
朝な朝な籬の菊のうつろへば 露さへ色の変はりゆくかな