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白菊の葉に置く露に宿らずは
花とぞ見まし照らす月影

歌の意味
白菊の葉に置いた露に宿って光っていなかったなら、白菊を照らす月の光を、花そのものと見誤ったことだろう。
鑑賞
巻第五 秋歌下 347

詞書「月照菊花といへる心をよみ侍りける」
 「月照菊花」、すなわち月が菊の花を照らすという題で詠んだ歌である。白菊を照らす月の光は花と同じ白さなので、もし葉に置く露に宿って光っていなかったら、月の光を白菊の花そのものと見誤っただろう、と詠む。花と月光の白さが溶け合うさまを、葉の露に宿る光によってかろうじて見分けるという趣向で表している。
 作者の「内のおほいまうちきみ」は藤原良通である。摂政九条兼実の長男で、内大臣に至ったが、若くして世を去った。
 本巻の第三百四十六首から第三百五十首までの五首は菊の歌で、第三百四十六首第三百四十八首第三百五十首は結句に「白菊の花」を置く。

 初句「白菊の」は、本巻の第三百四十六首第三百四十八首第三百五十首の結句「白菊の花」と同じく白菊を詠む。
 二句「葉に置く露に」は、花ではなく葉の露を示し、月の光がとどまる所をいう。
 三句「宿らずは」の「宿る」は光がとどまり映ること、「ずは」は、もし〜でなかったら、と仮定を表す。
 四句「花とぞ見まし」の「まし」は反実仮想の助動詞で、三句の「ずは」と呼応し、花と見ただろうに、の意となる。「ぞ」は係助詞で、「まし」と連体形で結ぶ。ここで句切れとなる。
 結句「照らす月影」は体言止めで、花と見誤りかねないものの正体を最後に示し、題の「月照」を示す。

うちのおほいまうちきみ:内大臣を和語で呼んだ名
やどる:光などがとどまり映る
つきかげ:月の光
作者
藤原良通
出典
千載和歌集
前の歌
今朝見ればさながら霜をいただきて 翁さびゆく白菊の花
次の歌
雪ならば籬にのみは積もらじと 思ひとくにぞ白菊の花