軒近く今日しも来鳴く時鳥
ねをやあやめにそへて葺くらん
- 歌の意味
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軒近くに、ちょうど端午の今日来て鳴く時鳥は、その鳴き声を菖蒲の根に添えて、軒に葺こうというのだろうか。
- 鑑賞
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巻第三 夏歌 170
詞書は前の歌に続き「菖蒲のうたとてよみ侍りける」
前歌と同じく「菖蒲」を題として詠んだ歌である。端午の節句の今日、菖蒲を葺いた軒の近くに時鳥が来て鳴くのは、その鳴き「音」を菖蒲の「根」に添えて、軒に葺こうというのだろうか、と詠む。「ね」に「音」と「根」とを掛け、端午の菖蒲と夏の時鳥という二つの景物を一首に取り合わせた機知の歌である。菖蒲の一連はここで結ばれる。
作者の「内大臣」は藤原良通である。摂政九条兼実の長男で、若くして内大臣に至ったが、文治四年(1188)に二十二歳で急死した。
初句「軒近く」は、菖蒲を葺いた軒の近くに、の意である。
二句「今日しも来鳴く」の「しも」は強意で、ちょうど端午の節句の今日、の意となる。「来鳴く」は来て鳴く意である。
三句「時鳥」は、四句以下の主語を示す。本巻の第百六十七首まで続いた時鳥の一連を、菖蒲の歌の中で受け直している。
四句「ねをやあやめに」の「ね」は、時鳥の鳴き「音」と菖蒲の「根」とを掛ける。「や」は疑問の係助詞で、結句の「らん」と係り結びをなす。
結句「そへて葺くらん」の「葺く」は屋根を覆う意で、「らん」は現在推量の助動詞の連体形で、「や」の結びとなる。
ね:時鳥の鳴き「音」と、菖蒲の「根」を掛ける
ふく:屋根を覆う、軒に菖蒲などを差す
きなく:来て鳴く
- 作者
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藤原良通
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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五月雨に濡れ濡れ引かむあやめ草 沼の石垣浪もこそ越せ
- 次の歌
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ただならぬ花橘のにほひかな よそふる袖は誰となけれど