降るままに跡絶えぬれば鈴鹿山
雪こそ関の鎖しなりけれ
- 歌の意味
-
雪が降るにつれて人の通った跡が絶えてしまったので、鈴鹿山では、雪こそが関の門を閉ざすものであったのだ。
- 鑑賞
-
巻第六 冬歌 467
詞書「関路雪満といへる心をよみ侍りける」
関路雪満、すなわち関所への道に雪が満ちるという題で詠んだ歌である。雪が降るにつれて人の通った跡が絶えてしまったので、鈴鹿山では雪こそが関の門を閉ざすものであった、と詠む。関所は本来、人の往来を門で取り締まるところであるが、雪が人の通いを絶つことを、雪が関の戸を閉ざしたものと見立てている。
作者の「内大臣」は藤原良通である。摂政九条兼実の長男で、内大臣に至ったが、若くして世を去った。
第四百四十五首から第四百六十七首まで、雪を詠む歌が続く。本歌はその結びの歌で、第四百五十八首、第四百六十五首と続いた、雪が人の跡を絶つという趣向を、関所という場で集約している。
初句「降るままに」は、雪が降るにつれて、の意である。
二句「跡絶えぬれば」の「跡」は人の通った跡、「ぬれ」は完了の助動詞「ぬ」の已然形で、「ば」は順接の確定条件である。本巻の第四百五十八首の「跡も絶え」、第四百六十五首の「跡絶えて」と同じく、雪が人の跡を絶つ。
三句「鈴鹿山」は伊勢国の山で、東海道の要所である鈴鹿の関が置かれた歌枕である。
四句「雪こそ関の」の「こそ」は強意の係助詞で、結句の「けれ」と已然形で結ぶ。人ではなく雪こそが、と強める。
結句「鎖しなりけれ」の「鎖し」は戸を閉ざすこと、またその錠である。「けれ」は詠嘆の助動詞「けり」の已然形で、雪が関の戸を閉ざすものであったのだ、と気づきを示す。
すずかやま:伊勢国の山で、鈴鹿の関が置かれた
とざし:戸を閉ざすこと、またその錠
- 作者
-
藤原良通
- 出典
-
千載和歌集
- 前の歌
-
雪降れば木々の梢に咲きそむる 枝よりほかの花も散りけり
- 次の歌
-
山里の垣根の梅は咲きにけり かばかりこそは春も匂はめ