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むら雲の時雨れて染むる紅葉葉は
薄く濃くこそ色に見えけれ

歌の意味
群がる雲が時雨を降らせて染める紅葉は、雲の厚い薄いに応じて、薄くも濃くも色づいて見えることだ。
鑑賞
巻第五 秋歌下 354

詞書は前の歌に続き「紅葉の心をよみ侍りける」
 紅葉の題で詠んだ歌である。群がり集まった雲が時雨を降らせて染める紅葉は、雲がまだらであるために、ところによって薄くも濃くも色づいて見える、と詠む。紅葉の濃淡を、むら雲の降らせる時雨のむらに由来するものと見なす、理知的な趣向である。
 作者の「覚延法師」は院政期の僧であるが、詳しい伝は明らかでない。
 前歌の第三百五十三首に続き、時雨が紅葉を染めるという考えをふまえて詠む。

 初句「むら雲の」の「むら雲」は群がり集まった雲で、「むら」には、まだらの意も響く。
 二句「時雨れて染むる」の「時雨る」は時雨が降る意、「染む」は色を染める意である。前歌の第三百五十三首の「初時雨」と同じく、時雨が紅葉を染めると見る。
 三句「紅葉葉は」は、主題を示す。
 四句「薄く濃くこそ」の「こそ」は強意の係助詞で、結句の「けれ」と已然形で結ぶ。色の濃淡を示す。
 結句「色に見えけれ」は、四句の「こそ」を受けて已然形で結ぶ。「けり」は気づきの詠嘆である。

むらくも:群がり集まった雲
しぐる:時雨が降る
そむ:色を染める
作者
覚延
出典
千載和歌集
前の歌
初時雨降るほどもなくしもと結ふ 葛城山は色づきにけり
次の歌
時雨れゆく四方の梢の色よりも 秋は夕べの変はるなりけり