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初時雨降るほどもなくしもと結ふ
葛城山は色づきにけり

歌の意味
初時雨が降ってまもないのに、葛城山はもう色づいてしまったことだ。
鑑賞
巻第五 秋歌下 353

詞書「紅葉の心をよみ侍りける」
 紅葉の題で詠んだ歌である。その秋初めての時雨が降ってからまだ間もないのに、葛城山はもう一面に色づいてしまった、と詠む。時雨が木の葉を染めるという考えをふまえ、わずかな時雨で山が色づいた早さへの驚きを表している。
 作者の「仁和寺後入道法親王(覚性)」は鳥羽天皇の皇子である。仁和寺の第五世門跡となり、紫金台寺御室と呼ばれた。
 本歌から紅葉の歌が続く。巻第四の巻末の第三百一首も「しもと結ふ葛城山」と同じ語を用いて谷川の月を詠んでいた。

 初句「初時雨」は、その秋や冬に初めて降る時雨である。時雨は木の葉を染めるものとされた。
 二句「降るほどもなく」は、降ってから間もないのに、の意で、色づきの早さを強調する。
 三句「しもと結ふ」は、「葛城」にかかる枕詞である。巻第四の巻末の第三百一首も同じ枕詞を置く。
 四句「葛城山は」の「葛城山」は大和国と河内国の境にある山である。
 結句「色づきにけり」の「に」は完了の助動詞「ぬ」、「けり」は詠嘆で、もう色づいてしまったことだ、と驚きをこめて結ぶ。

はつしぐれ:その秋や冬に初めて降る時雨
しもとゆふ:「葛城」にかかる枕詞
かづらきやま:大和国と河内国の境にある山
作者
覚性法親王
出典
千載和歌集
前の歌
秋にあへずさこそは葛の色づかめ あなうらめしの風のけしきや
次の歌
むら雲の時雨れて染むる紅葉葉は 薄く濃くこそ色に見えけれ