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亡き人を思ひ出でたる夕暮れは
恨みしことぞ悔しかりける

歌の意味
亡くなった人を思い出す夕暮れには、生前にその人を恨んだことが、悔やまれてならない。
鑑賞
巻第十五 恋歌五 954

詞書「暮恋故人といへる心を」
 「暮れに故人を恋ふ」という題で詠んだ歌である。亡き人を思い出した夕暮れは、恨んだことが悔やまれる、と詠む。夕暮れは恋人の訪れを待つ時刻であり、その時刻に亡き人を思い出すと、生前に恨み言を言ったことが今さらながら悔やまれると、もう二度と会えない人への悔恨を詠んでいる。
 作者の「仁和寺後入道法親王」は覚性法親王である。鳥羽天皇の第五皇子で、母は待賢門院璋子であり、崇徳院、後白河院の同母弟にあたる。幼くして仁和寺に入って出家し、のちに仁和寺の門跡を継いで、紫金台寺御室と呼ばれた。
 本巻の第九百十六首「恨みずは忘れぬ人もありなまし」と同じく、恨んだことを悔やむ歌である。第九百十六首が恨んだために相手の心が離れたことを悔やむのに対し、本歌は恨んだ相手が亡くなった後に悔やんでおり、同じ悔恨を生と死の隔てを通して詠んでいる。また第九百四十四首の「思ひ絶えたる暮れ」と、夕暮れの恋を詠む点で通う。

 初句「亡き人を」は、亡くなった人を、の意で、題の「故人」を受ける。
 二句「思ひ出でたる」の「たる」は完了の助動詞「たり」の連体形で、思い出した、の意である。
 三句「夕暮れは」は題の「暮」を受け、恋人の訪れを待つ時刻を示す。本巻の第九百四十四首の結句「暮れもありけり」と、夕暮れを詠む点で通う。
 四句「恨みしことぞ」の「し」は過去の助動詞「き」の連体形で、生前に恨んだことが、の意である。「ぞ」は強意の係助詞で、結句の「ける」と連体形で結ぶ。本巻の第九百十六首の初句「恨みずは」と、恨むことを詠む点で通う。
 結句「悔しかりける」の「悔しかり」は形容詞「悔し」の連用形、「ける」は気づきの詠嘆の助動詞「けり」の連体形で、四句の「ぞ」を受けて結ぶ。悔やまれることだ、の意である。

なきひと:亡くなった人
作者
覚性法親王
出典
千載和歌集
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よしさらば君に心は尽くしてん 又も恋しき人もこそあれ
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