よしさらば君に心は尽くしてん
又も恋しき人もこそあれ
- 歌の意味
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ええ、それならば、あなたにこの心をすっかり尽くしてしまおう。そうしないと、また別に恋しく思う人が現れでもしたら困るから。
- 鑑賞
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巻第十五 恋歌五 953
詞書「十首歌人の詠ませ侍りける時、詠める」
ある人が十首の歌を詠ませた時に詠んだ歌である。ええ、それならばあなたに心は尽くしてしまおう、また別に恋しい人ができては困るから、と詠む。心を残しておくと、また別の人に恋をしてしまうかもしれないので、いっそ心のすべてをあなたに尽くしきってしまおうと、決意の形で一途な思いを伝えている。「もこそ」の危ぶむ表現を用いて、自分の心の移ろいやすさを逆手に取った、機知のある恋の歌である。
作者の「前参議教長」は藤原教長である。大納言藤原忠教の子で、参議に至った。崇徳院の近臣で、保元の乱の後に配流された。能書家としても知られ、久安百首の作者の一人である。
本巻の第九百十八首「我が心さへなど変はるらん」も自分の心の変わることを詠むが、本歌は心が移ることを先回りして恐れ、心をすべて相手に尽くそうと詠んでいる。
初句「よしさらば」の「よし」は不満ながら許す意を表す副詞、「さらば」はそれならば、の意で、ええままよ、それならば、の意である。
二句「君に心は」は、あなたに私の心は、の意である。
三句「尽くしてん」の「尽くす」はすべて出し尽くす意、「て」は完了(強意)の助動詞「つ」の未然形、「ん」は意志の助動詞「む」で、尽くしてしまおう、の意である。ここで句切れとなる。
四句「又も恋しき」は、ほかにまた恋しく思う、の意である。
結句「人もこそあれ」の「もこそ」は、そうなっては困る、という危ぶむ気持ちを表し、「あれ」は「あり」の已然形で「こそ」を受けて結ぶ。恋しい人がいでもしたら困る、の意である。
つくす:すべて出し尽くす
- 作者
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藤原教長
- 出典
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千載和歌集
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秋の夜を物思ふことの限りとは ひとり寝覚めの枕にぞ知る
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亡き人を思ひ出でたる夕暮れは 恨みしことぞ悔しかりける