鴛鴦の浮き寝の床や荒れぬらん
つららゐにけり昆陽の池水
- 歌の意味
-
鴛鴦が浮き寝する床は荒れてしまったのだろうか。昆陽の池の水に、氷が張ったことだ。
- 鑑賞
-
巻第六 冬歌 434
詞書「氷始結といへる心をよめる」
氷始結、すなわち氷が張りはじめるという題で詠んだ歌である。鴛鴦が浮き寝する床は荒れてしまったのだろうか、昆陽の池の水に氷が張った、と詠む。水面が凍って浮き寝ができなくなった鴛鴦を思いやり、張りはじめた氷を、鴛鴦の寝床が荒れたものとしてとらえている。
作者の「権中納言経房」は藤原経房である。権右中弁藤原光房の子で、権中納言、のちに権大納言に至った。日記「吉記」を残した。
第四百二十九首から第四百三十七首までの九首は、水鳥を詠む歌である。鴛鴦や鴨などの水鳥は、冬の水辺の景物とされた。
初句「鴛鴦の」は、前々歌の第四百三十二首の鴛鴦を受ける。
二句「浮き寝の床や」の「床」は寝床で、水面を鴛鴦の寝床と見る。「や」は疑問の係助詞で、三句の「らん」と連体形で結ぶ。
三句「荒れぬらん」は、荒れてしまったのだろうか、の意で、ここで句切れとなる。
四句「つららゐにけり」の「つらら」は水面に張った氷、「ゐる」は氷が張る意である。「けり」は詠嘆の助動詞で、ここで句切れとなる。本巻の第四百四十二首も「つららゐて」と同じ語を用いる。
結句「昆陽の池水」は体言止めである。「昆陽の池」は摂津国の池で、歌枕である。
うきね:水に浮いたまま寝ること
つらら:水面に張った氷
ゐる:氷が張る
こやのいけ:摂津国の池で、歌枕
- 作者
-
藤原経房
- 出典
-
千載和歌集
- 前の歌
-
難波潟入り江を巡る葦鴨の 玉藻の船に浮き寝すらしも
- 次の歌
-
鴨の居る入り江の葦は霜枯れて おのれのみこそあをばなりけれ