難波潟入り江を巡る葦鴨の
玉藻の船に浮き寝すらしも
- 歌の意味
-
難波潟の入り江を巡る葦鴨が、玉藻を船として浮き寝をしているらしい。
- 鑑賞
-
巻第六 冬歌 433
詞書は前の歌に続き「百首歌召しける時、よませ給うける」
久安百首の水鳥の題で詠んだ歌である。難波潟の入り江を巡る葦鴨が、玉藻を船として浮き寝をしているらしい、と詠む。水面に漂う藻の上で眠る鴨の姿を、藻の船に乗って眠るものと見立てた、のどかな趣の一首である。
作者の「左京大夫顕輔」は修理大夫藤原顕季の子である。崇徳院の院宣を受けて詞花和歌集を撰んだ。六条藤家の歌道を継ぎ、小倉百人一首にも歌が採られている。
第四百二十九首から第四百三十七首までの九首は、水鳥を詠む歌である。鴛鴦や鴨などの水鳥は、冬の水辺の景物とされた。前歌の第四百三十二首と本歌は、久安百首の水鳥の歌である。
初句「難波潟」は摂津国の難波の浅い海で、葦の生い茂る歌枕である。本巻の第四百二十八首も難波の葦を詠む。
二句「入り江を巡る」は、入り江を泳ぎ巡る、の意である。
三句「葦鴨の」の「葦鴨」は、葦の生える水辺にいる鴨である。本巻の第四百三十七首も「葦鴨」を詠む。
四句「玉藻の船に」は、玉藻を船に見立てたものである。本巻の第四百三十一首の「玉藻の床」と同じく、藻の上で眠る水鳥を詠む。
結句「浮き寝すらしも」の「らし」は根拠のある推定の助動詞、「も」は詠嘆である。前歌の第四百三十二首の「浮き寝」を受ける。
なにはがた:摂津国の難波の浅い海
あしがも:葦の生える水辺にいる鴨
たまも:藻の美称
うきね:水に浮いたまま寝ること
- 作者
-
藤原顕輔
- 出典
-
千載和歌集
- 前の歌
-
この頃の鴛鴦の浮き寝ぞあはれなる 上毛の霜よ下の氷よ
- 次の歌
-
鴛鴦の浮き寝の床や荒れぬらん つららゐにけり昆陽の池水