さ夜深き雲居に雁も音すなり
我ひとりやは旅の空なる
- 歌の意味
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夜が更けた空の雲の中で、雁も鳴いて渡ってゆく声がする。私ひとりだけが旅の空にあるのだろうか、いやそうではない。
- 鑑賞
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巻第八 羈旅歌 508
詞書「法性寺入道内大臣の時の歌合に、旅宿雁といへる心をよめる」
藤原忠通が内大臣であった時の歌合で、旅宿の雁という題で詠んだ歌である。夜更けの空の雲の中で雁も鳴いて渡ってゆく、私ひとりだけが旅の空にあるのだろうか、いやそうではない、と詠む。旅寝の夜に聞く雁の声に、同じく旅をするものを見いだし、孤独な旅の心を慰めている。
作者の「源雅光」は右大臣源顕房の子で、村上源氏の一族である。
なお本文の二句は「雲ゐに雁も」とあり、読み仮名の行の「くもゐのかりも」と一致しない。ここでは本文の表記に従う。
初句「さ夜深き」の「さ」は接頭語で、夜の更けた、の意である。
二句「雲居に雁も」の「雲居」は雲のある所、空の意である。「も」は、私と同じように雁も、の意を含む。
三句「音すなり」の「なり」は聴覚による推定の助動詞で、鳴く声が聞こえる、の意である。ここで句切れとなる。
四句「我ひとりやは」の「やは」は反語の係助詞で、結句の「なる」と連体形で結ぶ。
結句「旅の空なる」の「なる」は断定の助動詞「なり」の連体形で、私ひとりが旅の空にいるのだろうか、いやそうではない、の意となる。前歌の第五百七首が都を恋う旅の嘆きであるのに対し、本歌は旅の仲間を雁に見いだしている。
くもゐ:雲のある高い所、空
- 作者
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源雅光
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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別れ行く都の方の恋しきに いざ結び見む忘井の水
- 次の歌
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狩衣袖の涙に宿る夜は 月も旅寝の心地こそすれ