古典和歌stream

君が代に比べて言はば松山の
松の葉数は少なかりけり

歌の意味
君の齢の長さに比べて言うならば、松山の松の葉の数は少ないものであった。
鑑賞
巻第十 賀歌 633

詞書「俊綱朝臣、讃岐の守にまかれりける時、祝ひの心を詠める」
 橘俊綱が讃岐守として任国に下った時に、祝いの心を詠んだ歌である。君の齢に比べて言うなら、松山の松の葉の数は少ないものであった、と詠む。讃岐国の歌枕である松山の、数え切れないほどの松の葉さえ、君の長寿の年数には及ばないと誇張して、任国に赴く俊綱を祝っている。
 作者の「藤原孝善」は平安時代中期から後期の歌人で、橘俊綱の周辺で活動した。経歴の詳細は多く伝わらない。
 前歌の第六百三十二首に続き、橘俊綱にかかわる祝いの歌である。本巻の第六百十八首が椿でさえ君が代のうちに幾度も姿を変えると詠んだのと、長寿の象徴をも君が代に及ばないものとする発想が共通する。

 初句「君が代に」は、君の齢に、の意である。本巻の第六百九首「君が代は」、第六百三十七首「君が代の」とも響き合う。
 二句「比べて言はば」は、比べて言うならば、の意で、未然形に「ば」が付いた仮定条件である。
 三句「松山の」の「松山」は讃岐国の歌枕である。四句の「松」と同じ音を重ねて調子を整えている。
 四句「松の葉数は」は、松の葉の数は、の意である。数え切れない松の葉を長寿の年数と比べる。
 結句「少なかりけり」の「けり」は気づきの詠嘆で、少ないものであったことだ、の意である。

まつやま:讃岐国の歌枕
まかる:行く、任国へ下る
作者
藤原孝善
出典
千載和歌集
前の歌
瑞垣の桂を移す宿なれば 月見んことぞ久しかるべき
次の歌
千代とのみ同じことをぞ調ぶなる 長田の山の峰の松風