つれなくぞ夢にも見ゆるさ夜衣
うらみんとては返しやはせし
- 歌の意味
-
夢の中でもあの人はつれなく見えることだ。夜の衣を裏返して寝たのは、恨むためではなかったのに。
- 鑑賞
-
巻第十一 恋歌一 700
詞書は前の歌に続き「恋の歌とて詠み侍りける」
前の歌と同じ詞書のもとの恋の歌である。夢にもつれなく見えることだ、夜の衣を裏返したのは恨もうとしてであったろうか、と詠む。夜の衣を裏返して寝ると恋しい人を夢に見るという俗信を踏まえ、せっかく衣を返して夢に見たのに、夢の中の相手までもつれなかったと嘆く。「うらみ」に衣の「裏見」と「恨み」を掛け、衣の縁でまとめている。
作者の「藤原伊綱」は平安時代末期の官人、歌人である。経歴の詳細は多く伝わらない。
本巻の第六百七十七首の「夢の通ひ路」と同じく、夢に恋人を求める歌である。
初句「つれなくぞ」の「ぞ」は強意の係助詞で、二句の「見ゆる」と連体形で結ぶ。
二句「夢にも見ゆる」は、夢の中でもつれなく見える、の意である。ここで句切れとなる。
三句「さ夜衣」は夜着る衣で、裏返して寝ると恋しい人を夢に見るという俗信を踏まえる。
四句「うらみんとては」の「うらみ」は、衣の「裏」を見る意と、相手を「恨む」意を掛ける。
結句「返しやはせし」の「返し」は衣を裏返す意、「やは」は反語、「し」は過去の助動詞「き」の連体形で、裏返したりしたろうか、いやそうではない、の意である。
さよごろも:夜着る衣
うらむ:恨む意と、衣の裏を見る意を掛ける
かへす:衣を裏返す
- 作者
-
藤原伊綱
- 出典
-
千載和歌集
- 前の歌
-
よそ人に問はれぬるかな君にこそ 見せばやと思ふ袖の雫を
- 次の歌
-
思ひ出づるその慰めもありなまし 逢ひ見て後のつらさなりせば