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思ひ出でて誰をか人の尋ねまし
憂きに堪へたる命ならずは

歌の意味
思い出して、あの人はいったい誰を訪ねたというのだろう。つらさに耐えて生き長らえてきたこの命でなかったならば。
鑑賞
巻第十四 恋歌四 843

詞書「久しくまうで来ざりける人の、おとづれたりける返事につかはしける」
 長く訪れてこなかった男が便りをよこしてきたので、その返事として送った歌である。思い出して、あなたは誰を訪ねたというのだろうか、つらさに耐えて生きながらえた私の命でなかったら、と詠む。訪れが絶えてもつらさに耐えて生きていたからこそ、今こうして便りを受けられるのだと、恨みを込めて相手の薄情を責めている。
 作者の「小式部」は小式部内侍と考えられる。和泉式部と橘道貞の娘で、母とともに上東門院彰子に仕えた。若くして母に先立って没した。小倉百人一首にも歌が採られている。

 初句「思ひ出でて」は、久しく忘れていた私を思い出して、の意である。
 二句「誰をか人の」の「か」は疑問の係助詞で、三句の「尋ねまし」と連体形で結ぶ。「人」は便りをよこした相手の男を指す。
 三句「尋ねまし」の「まし」は反実仮想の助動詞で、結句の「ならずは」と呼応して、もし私が生きていなかったら誰を訪ねただろうか、の意となる。ここで句切れとなり、下の句と倒置の関係にある。
 四句「憂きに堪へたる」の「憂き」は相手の訪れが絶えたつらさのことで、そのつらさに耐えてきた、の意である。
 結句「命ならずは」の「ずは」は打消の仮定で、命でなかったならば、の意である。生き長らえたこと自体が相手の薄情に耐えた証であると訴えている。

たづぬ:訪ねる、訪れる
作者
小式部内侍
出典
千載和歌集
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よそにては中々さてもありにしを うたて物思ふ昨日今日かな
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待つとてもかばかりこそはあらましか 思ひもかけぬ秋の夕暮