よそにては中々さてもありにしを
うたて物思ふ昨日今日かな
- 歌の意味
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遠く離れていた時には、かえってそれはそれで過ごせていたのに、近くに来たと聞いた昨日今日は、ますますひどく物思いをすることだ。
- 鑑賞
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巻第十四 恋歌四 842
詞書「昔御覧じける人の、近きほどにわたりたるよし聞かせ給うて、つかはしける」
かつて契りを交わした女性が近くに移ってきたと聞いて、送った歌である。遠く離れていた時はかえってそのままで過ごせていたのに、近くに来たと知った昨日今日はいっそう物思いをすることだ、と詠む。会えないことは同じでも、相手が近くにいると知ると、かえって思いが募って落ち着かないという、恋心の不思議な動きを捉えている。
作者の「花山院御製」は第六十五代花山天皇である。冷泉天皇の第一皇子で、在位わずか二年で出家した。退位後は和歌に親しみ、拾遺和歌集の成立に関わったとされる。
初句「よそにては」の「よそ」は自分とは離れた所のことで、相手が遠くにいた時は、の意である。
二句「中々さてもありにしを」の「中々」はかえって、むしろ、の意で、「さても」はそのままでも、の意である。
三句「ありにしを」の「に」は完了の助動詞「ぬ」の連用形、「し」は過去の助動詞「き」の連体形で、「を」は逆接の接続助詞である。過ごせていたのに、の意となる。
四句「うたて物思ふ」の「うたて」はいっそうひどく、いやなことに、の意で、思いの募る様を嘆く語である。
結句「昨日今日かな」は相手が近くに来たと聞いてからの日々を指し、「かな」は詠嘆の終助詞である。遠く離れていた過去と、近くにいる今とを対比して結んでいる。
うたて:いっそうひどく、いやなことに
- 作者
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花山院
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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これもみなさぞな昔の契りぞと 思ふものからあさましきかな
- 次の歌
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思ひ出でて誰をか人の尋ねまし 憂きに堪へたる命ならずは