相見むと思ひしことをたがふれば
つらきかたにも定めつるかな
- 歌の意味
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会いたいと思っていたことを違えて帰ってしまったので、あなたが方違えで来たこの方角を、つらい方角とも定めてしまったことだ。
- 鑑賞
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巻第十六 雑歌上 968
詞書「いぶかしく思されける人の娘の、女房の局にゆかりありて、忍びて方違へに参りけるを、暁疾く出でにければ、遣はしける」
会ってみたいと心ひかれていた人の娘が、女房の局に縁があって、ひそかに方違えのために斎院に来ていたが、明け方早くに帰ってしまったので送った歌である。会いたいと思っていたのにそれが違ってしまったので、ここをつらい方角とも定めてしまった、と詠む。方違えという習俗を踏まえ、「たがふ」「かた」に方違えの意を響かせて、会えずに帰ってしまった相手への残念な思いを機知をこめて伝えている。
作者の「選子内親王」は村上天皇の皇女である。円融天皇から後一条天皇まで五代、五十七年にわたって賀茂の斎院をつとめ、大斎院と呼ばれた。その御所は和歌や物語の文化的な場として知られた。
次歌の第九百六十九首は選子内親王に仕えた女房の歌で、大斎院ゆかりの歌が並ぶ。
初句「相見むと」の「む」は意志の助動詞で、会いたいと、の意である。
二句「思ひしことを」の「し」は過去の助動詞「き」の連体形で、思っていたことを、の意である。
三句「たがふれば」の「たがふ」は、違える、思いどおりにならない意で、方違えの「たがへ」を響かせている。「ば」は確定条件で、違えたので、の意である。
四句「つらきかたにも」の「かた」は、方角の意と、方面、ありさまの意を掛ける掛詞で、つらい方角とも、の意である。
結句「定めつるかな」の「つる」は完了の助動詞「つ」の連体形、「かな」は詠嘆の終助詞で、定めてしまったことだ、の意である。
かたたがへ:外出の際、凶とされる方角を避けて、前夜に別の方角の家に泊まること
かた:方角の意と、ありさまの意を掛ける
つぼね:宮中や貴人の邸で女房に与えられた部屋
たがふ:思いと違える
- 作者
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選子内親王
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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雲の上も暮らしかねける春の日を 所がらともながめつるかな
- 次の歌
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禊せし賀茂の川波立ちかへり はやく見し瀬に袖は濡れきや