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絶えず立つ室の八島の煙かな
いかに尽きせぬおもひなるらん

歌の意味
絶えず立ちのぼる室の八島の煙であることよ。いったいどれほど尽きることのない思いの火であるのだろうか。
鑑賞
巻第十六 雑歌上 1041

詞書「室の八島を詠める」
 室の八島を詠んだ歌である。絶えず立つ室の八島の煙であることよ、どれほど尽きることのない思いの火なのだろう、と詠む。室の八島は、水気が煙のように立ちのぼるとされた下野国の歌枕である。絶えることのない煙を見て、その下には尽きない思いの火が燃えているのだろうと想像し、「おもひ」の「ひ」に「火」を掛けている。
 作者の「藤原顕方」は平安時代後期の歌人で、伝記の詳細は明らかでない。
 本歌から巻末まで、各地の歌枕を詠む歌が続く。前歌までの滝の歌に続き、本歌は煙の立つ名所を詠んでいる。

 初句「絶えず立つ」は、絶えることなく立ちのぼる、の意である。
 二句「室の八島の」は、下野国の歌枕で、水気が煙のように立ちのぼるとされた地である。
 三句「煙かな」の「かな」は詠嘆の終助詞で、煙であることよ、の意である。ここで句切れとなる。
 四句「いかに尽きせぬ」は、どれほど尽きることのない、の意である。
 結句「おもひなるらん」の「おもひ」は、思いの意に「火」を掛ける掛詞で、煙の縁語である。「らん」は現在推量の助動詞で、思いの火なのだろうか、の意である。

むろのやしま:下野国の歌枕で、水気が煙のように立つとされた地
おもひ:「思ひ」の意に、「ひ」に「火」を掛ける
作者
藤原顕方
出典
千載和歌集
前の歌
音にのみ聞きしはことの数ならで 名よりも高き布引の滝
次の歌
葛城や渡しも果てぬものゆゑに 久米の岩橋苔生ひにけり