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葛城や渡しも果てぬものゆゑに
久米の岩橋苔生ひにけり

歌の意味
葛城山の久米の岩橋は、架け渡し終えることもなかったのに、苔が生えてしまったことだ。
鑑賞
巻第十六 雑歌上 1042

詞書「堀河院御時、百首歌奉りける時、橋の歌とて詠み侍りける」
 堀河天皇の時代に百首歌を奉った時、橋の歌として詠んだ歌である。葛城の久米の岩橋は、渡し終えることもなかったのに苔が生えてしまった、と詠む。葛城山の一言主神が役行者に命じられて岩橋を架けようとしたが、昼は姿を恥じて夜しか働かなかったため完成しなかったという伝説を踏まえ、未完のまま長い年月を経て苔むした岩橋の姿を詠んでいる。
 作者の「大納言師頼」は源師頼である。左大臣源俊房の子で、大納言に至った。
 本巻の第千三十首から第千三十二首の長柄の橋に続き、本歌も橋を詠む。長柄の橋が跡もなく朽ちたのに対し、本歌は架け終えることもないまま苔むした岩橋を詠み、時の経過を示す橋の姿が対照をなしている。

 初句「葛城や」は、大和国の葛城山で、「や」は詠嘆の間投助詞である。
 二句「渡しも果てぬ」の「渡す」は橋を架け渡す意、「果てぬ」は終わらない意で、架け渡し終えることもない、の意である。
 三句「ものゆゑに」は逆接の接続助詞で、〜なのに、の意である。
 四句「久米の岩橋」は、葛城山と吉野の金峰山の間に架けようとして果たせなかったという伝説の石橋である。
 結句「苔生ひにけり」の「に」は完了の助動詞「ぬ」の連用形、「けり」は詠嘆で、苔が生えてしまったことだ、の意である。本巻の第千三十二首の三句「跡もなし」と、橋に流れた年月を詠む点で通う。

くめのいははし:葛城山と金峰山の間に、一言主神が架けようとして果たせなかったという伝説の石橋
わたす:橋を架け渡す
かづらき:大和国と河内国の境にある山
作者
源師頼
出典
千載和歌集
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絶えず立つ室の八島の煙かな いかに尽きせぬおもひなるらん
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