いはおろすかたこそなけれ伊勢の海の
潮瀬にかかる海人の釣舟
- 歌の意味
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錨の石を下ろす場所もないことだ。伊勢の海の潮の流れの速い瀬にかかっている漁師の釣舟は。
- 鑑賞
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巻第十六 雑歌上 1043
詞書「同じ御時、上の男ども題を探りて歌仕うまつりける時、釣舟を取りて詠み侍りける」
堀河天皇の同じ時代に、殿上人たちが題を探り取って歌を詠進した時、「釣舟」の題を引いて詠んだ歌である。錨の石を下ろすところもないことだ、伊勢の海の潮瀬にかかる海人の釣舟は、と詠む。潮の流れの激しい伊勢の海の瀬で、錨を下ろして舟を留める場所もなく、潮に流されながら漁をする海人の釣舟の心細いさまを描いている。
作者の「権中納言俊忠」は藤原俊忠である。藤原忠家の子で、権中納言に至った。藤原俊成の父である。
本巻の第千四十八首と結句「海人の釣舟」を共有し、第千四十九首の結句「沖の釣舟」とも釣舟を詠む点で通う。荒い潮瀬に揺れる釣舟を詠む本歌に対し、のちの二首は遠く霞む沖の釣舟を詠んでいる。
初句「いはおろす」の「いは」は、錨の代わりとして海に沈める石の意と解される。石を下ろす、の意である。
二句「かたこそなけれ」の「かた」は、場所、方法の意である。「こそ」は強意の係助詞で、已然形「なけれ」で結ぶ。下ろす所もない、の意である。ここで句切れとなる。
三句「伊勢の海の」は、伊勢国の海の、の意である。
四句「潮瀬にかかる」の「潮瀬」は潮の流れる瀬の意で、「かかる」は舟が留まっている意である。
結句「海人の釣舟」は、漁師の釣舟で、倒置の体言止めとなっている。本巻の第千四十八首の結句と同じ句である。
いは:岩、ここでは錨として沈める石
しほせ:潮の流れる瀬
あま:漁師
さぐる:題をくじで探り取る
- 作者
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藤原俊忠
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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葛城や渡しも果てぬものゆゑに 久米の岩橋苔生ひにけり
- 次の歌
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玉藻刈る伊良湖が崎の岩根松 幾代までにか年の経ぬらん