恋ひ恋ひてかひもなぎさに沖つ波
寄せてはやがて立ち返れとや
- 歌の意味
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恋し続けたかいもなく、渚に寄せる沖の波が寄せてはすぐに引き返すように、あなたのもとに来てはすぐに帰れというのか。
- 鑑賞
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巻第十二 恋歌二 711
詞書「来不留恋」
「来不留恋」、すなわち、来ても留まらない恋という題で詠んだ歌である。恋し続けたかいもなく、渚に寄せる沖の波のように、寄せてはすぐに立ち返れというのか、と詠む。渚に打ち寄せてはすぐに引いていく波に、やっと逢いに行ってもすぐに帰らされる恋のはかなさを重ね、相手を恨む歌である。
作者の「権中納言俊忠」は権大納言藤原忠家の子である。権中納言に至り、自邸でしばしば歌合や歌会を催した。本集の撰者藤原俊成の父である。
本巻の第七百八首、第七百九首の詞書に見える「権中納言俊忠家」の主人その人の歌が、二首の後に置かれている。
初句「恋ひ恋ひて」は、恋しく思い続けて、の意である。
二句「かひもなぎさに」の「かひ」は甲斐に貝を、「なぎさ」は無きに渚を掛ける。恋し続けた甲斐も無い、の意と、貝のある渚に、の意とを重ねる。
三句「沖つ波」の「つ」は格助詞「の」にあたる古い語で、沖の波、の意である。上の句全体が、寄せては返す波の景を導く。
四句「寄せてはやがて」の「やがて」は、すぐに、そのまま、の意である。波が寄せることに、恋人のもとへやって来ることを重ねる。
結句「立ち返れとや」の「とや」は、というのか、と問いかける。波が立ち返ることに、来てもすぐに帰されることを重ね、相手を恨む。
かひ:甲斐に貝を掛ける
なぎさ:無きに渚を掛ける
たちかへる:波が引き返す。もとの所へ帰る
- 作者
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藤原俊忠
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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結び置くふしみの里の草枕 解けでやみぬる旅にもあるかな
- 次の歌
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いかで我つれなき人に身を変へて 恋しきほどを思ひ知らせん