いかで我つれなき人に身を変へて
恋しきほどを思ひ知らせん
- 歌の意味
-
なんとかして私はつれないあの人と身を取り替えて、私がどれほど恋しく思っているかを、あの人に思い知らせたいものだ。
- 鑑賞
-
巻第十二 恋歌二 712
詞書「女のもとに遣はしける」
女のもとに贈った歌である。なんとかしてつれない人と身を入れ替えて、どれほど恋しいかを思い知らせたい、と詠む。相手と自分の立場を入れ替えれば、この恋の苦しさがわかってもらえるだろうという、かなわぬ願いを率直に訴えた歌である。
作者の「徳大寺左大臣」は藤原実能である。権大納言藤原公実の子で、左大臣に至り、徳大寺家の祖となった。鳥羽天皇の中宮待賢門院璋子の兄にあたる。
本巻の第七百五十首も三句を「身を変へて」とし、同じ句を用いている。また巻頭の第七百四首の作者藤原公実は本歌の作者の父である。
初句「いかで我」の「いかで」は願望の表現と呼応して、なんとかして、の意となり、結句の「ん」と呼応する。
二句「つれなき人に」の「つれなき」は形容詞「つれなし」の連体形で、思いに応えてくれない冷たい人に、の意である。
三句「身を変へて」は、身を入れ替えて、の意である。本巻の第七百五十首の三句と同じ句である。
四句「恋しきほどを」の「ほど」は程度をいい、どれほど恋しいかを、の意である。
結句「思ひ知らせん」の「ん」は意志、願望を表す助動詞「む」で、初句の「いかで」と呼応し、思い知らせたい、の意である。
みをかふ:互いの身を入れ替える
- 作者
-
藤原実能
- 出典
-
千載和歌集
- 前の歌
-
恋ひ恋ひてかひもなぎさに沖つ波 寄せてはやがて立ち返れとや
- 次の歌
-
玉藻刈る野島の浦の海人だにも いとかく袖は濡るるものかは