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玉藻刈る伊良湖が崎の岩根松
幾代までにか年の経ぬらん

歌の意味
美しい藻を刈る伊良湖が崎の、岩に根を張った松は、いったい幾世までの年を経てきたのだろうか。
鑑賞
巻第十六 雑歌上 1044

詞書「百首の歌の中に、松を詠める」
 百首歌の中で、松を詠んだ歌である。玉藻を刈る伊良湖が崎の岩根の松は、幾世まで年を経てきたのだろう、と詠む。海辺の岩に根を張って風雪に耐えてきた松の姿に、計り知れない長い歳月を思い、松の長寿をたたえている。
 作者の「修埋大夫顕季」は藤原顕季である。原文には「修埋」とあるが、修理大夫の誤りと見られる。藤原隆経の子で、白河院の近臣として修理大夫などをつとめた。六条藤家の祖で、柿本人麻呂の像を祀って歌を詠む人麻呂影供を始めた。
 巻頭の第九百五十九首「谷の松とや年を積ままし」と、松に長い年月を重ねる点で呼応している。また本巻の第千三十三首の「すみよしの松」とも、海辺の松を詠む点で通う。

 初句「玉藻刈る」は、美しい藻を刈る、の意で、伊良湖の地を導く言葉として古くから用いられた。
 二句「伊良湖が崎の」は、三河国の渥美半島の先端にある岬で、歌枕である。
 三句「岩根松」は、岩に根を張った松の意である。巻頭の第九百五十九首の四句「谷の松とや」と応じる。
 四句「幾代までにか」の「か」は疑問の係助詞で、結句の「らん」で結ぶ。幾世までの、の意である。
 結句「年の経ぬらん」の「ぬ」は完了の助動詞、「らん」は現在推量の助動詞で、年を経てきたのだろうか、の意である。巻頭の第九百五十九首の結句「年を積ままし」と応じる。

たまも:美しい藻
いはねまつ:岩に根を張った松
いらごがさき:三河国の渥美半島の先端にある岬、歌枕
作者
藤原顕季
出典
千載和歌集
前の歌
いはおろすかたこそなけれ伊勢の海の 潮瀬にかかる海人の釣舟
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潮満ては野島が崎のさゆり葉に 波越す風の吹かぬ日ぞなき