潮満ては野島が崎のさゆり葉に
波越す風の吹かぬ日ぞなき
- 歌の意味
-
潮が満ちると、野島が崎の百合の葉に、波を越えさせて吹きつける風の吹かない日はない。
- 鑑賞
-
巻第十六 雑歌上 1045
詞書「夏草を詠める」
夏草を詠んだ歌である。潮が満ちると、野島が崎のさゆりの葉に、波を越えて吹く風の吹かない日はない、と詠む。海に突き出た野島が崎の岬に咲く百合の葉が、満ち潮のたびに波しぶきを越えて吹きつける海風に揺られるさまを描き、海辺の夏草の厳しくも涼やかな姿をとらえている。
作者の「源俊頼朝臣」は源経信の子である。堀河院歌壇の中心として活躍し、白河院の命により『金葉和歌集』を撰進した。歌論書『俊頼髄脳』を著し、小倉百人一首にも歌が採られている。
前歌の第千四十四首が伊良湖が崎の岩根の松を詠むのに続き、本歌は野島が崎のさゆりを詠み、海辺の岬に生きる草木の歌が並ぶ。
初句「潮満ては」は、潮が満ちると、の意である。
二句「野島が崎の」は、淡路島の北西岸にある岬で、歌枕である。前歌の第千四十四首の二句「伊良湖が崎の」と、岬を詠む点で応じる。
三句「さゆり葉に」は、百合の葉に、の意で、「さ」は接頭語である。
四句「波越す風の」は、波を越えて吹きつける風の、の意である。
結句「吹かぬ日ぞなき」の「ぞ」は強意の係助詞で、連体形の「なき」で結ぶ。吹かない日はない、の意である。
のじまがさき:淡路島の北西岸にある岬、歌枕
さゆりば:百合の葉
- 作者
-
源俊頼
- 出典
-
千載和歌集
- 前の歌
-
玉藻刈る伊良湖が崎の岩根松 幾代までにか年の経ぬらん
- 次の歌
-
今日こそは都のかたの山の端も 見えずなるをの沖に出でぬれ