憂き瀬にも嬉しき瀬にも先に立つ
涙は同じ涙なりけり
- 歌の意味
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つらい折にも、うれしい折にも、真っ先にこぼれる涙は、どちらも同じ涙であったことだ。
- 鑑賞
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巻第十七 雑歌中 1117
詞書「題知らず」
つらい折にも、うれしい折にも、まず先に立つ涙は同じ涙であったことだ、と詠む。悲しい時に流す涙と、うれしい時に流す涙とは、心のありようは正反対であるのに、涙そのものは同じであると気づき、人の心の不思議さと、喜びにも悲しみにも通う涙のありさまを詠んでいる。「瀬」は川の浅瀬の意から折、場合の意となり、涙の縁語である。
作者の「藤原顕方」は平安時代後期の歌人で、伝記の詳細は明らかでない。
次歌の第千百十八首と、「瀬」と「涙」を共有する。本歌がうれしい瀬も憂き瀬も同じ涙と詠むのに対し、次歌は赦免に漏れた悲しみの瀬に涙川の水がまさると詠み、ともに瀬と涙を重ねている。
初句「憂き瀬にも」の「瀬」は、川の浅瀬の意から、折、場合の意を表し、つらい折にも、の意である。次歌の第千百十八首の初句「この瀬にも」と「瀬」を共有する。
二句「嬉しき瀬にも」は、うれしい折にも、の意で、初句と対をなしている。
三句「先に立つ」は、真っ先に現れる、の意である。
四句「涙は同じ」は、涙は同じものである、の意である。
結句「涙なりけり」は、四句の「涙」を重ねて、同じ涙であったことだ、と詠嘆している。
せ:川の浅瀬の意から、折、場合
- 作者
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藤原顕方
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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諸人の花咲く春をよそに見て なほしぐるるはしひ柴の袖
- 次の歌
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この瀬にも沈むと聞くは涙川 流れしよりもなほまさりけり