思ふことありあけがたの鹿の音は
なほ山深く家居せよとや
- 歌の意味
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思い悩むことがあって迎えた有明の明け方に聞く鹿の声は、もっと山深くに住まいを構えよと言っているのだろうか。
- 鑑賞
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巻第十七 雑歌中 1152
詞書「秋の頃山寺にて詠み侍りける」
秋のころ、山寺で詠んだ歌である。思うことがあって迎えた有明の明け方の鹿の声は、なお山深く住めというのだろうか、と詠む。心に悩みを抱えて眠れぬまま明け方を迎えると、有明の月の下で鹿が鳴いている。その悲しげな声が、まだ俗世に近いこの山寺ではなく、もっと山奥に住んで世を離れよと促しているように聞こえると、遁世への思いを深める心を詠んでいる。
作者の「藤原良清」は平安時代後期の歌人で、伝記の詳細は明らかでない。
前歌の第千百五十一首と鹿の声を共有する。前歌が山の奥にも鹿が鳴いていると逃れる道のなさを嘆くのに対し、本歌は鹿の声をさらに山深く住めという促しと聞いており、対照をなしている。
初句「思ふこと」は、思い悩むこと、の意である。本巻の第千六十四首と同じ初句である。
二句「ありあけがたの」の「あり」は、思うことが「有り」の意と「有明」を掛ける掛詞で、思い悩むことがあって迎えた有明の明け方の、の意となる。
三句「鹿の音は」は、鹿の鳴き声は、の意である。前歌の第千百五十一首の結句「鹿ぞ鳴くなる」と鹿の声を共有する。
四句「なほ山深く」は、さらに山深くに、の意である。
結句「家居せよとや」の「家居」は住まいを構えて住むことで、「とや」は、と言うのか、の意を表す。住めと言うのだろうか、の意である。
あり:「思ふことあり」の「有り」と「有明」を掛ける
いへゐ:住まいを構えて住むこと
ありあけ:月が空に残ったまま夜が明けること
- 作者
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藤原良清
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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世の中よ道こそなけれ思ひいる 山の奥にも鹿ぞ鳴くなる
- 次の歌
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見る夢の過ぎにし方を誘ひ来て 覚むる枕も昔なりせば