なほざりに折りつるものを梅の花
濃き香に我や衣染めてむ
- 歌の意味
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何気なく折っただけなのに、梅の花の濃い香りに、私は衣を染めてしまうのだろうか。
- 鑑賞
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巻第一 春歌上 16
詞書「題しらず」
何気なく折った梅の枝から、思いがけず濃い香りが衣に移ってしまうことを詠んだ歌である。軽い気持ちで手にした梅の香の強さに驚く心を、衣を染めるという表現で表している。
作者の「閑院左大臣」は藤原冬嗣である。藤原内麻呂の子で、嵯峨天皇の信任を得て初代の蔵人頭となり、左大臣に至った。邸宅の閑院にちなんでこう呼ばれる。
初句「なほざりに」は、深く考えずに、何気なくの意を表す。
二句「折りつるものを」の「ものを」は逆接で、何気なく折っただけなのに、と意外さを示している。
三句「梅の花」は、本巻の梅の歌の始まりにあたる。ここから梅の歌が多く続いていく。
四句「濃き香に我や」の「や」は疑問の係助詞で、結句の連体形「む」と係り結びをなす。梅の香が衣に移るという趣向は、本巻の第二十七首の「香にもこそしめ」や第三十一首の「心を染めば」とも響き合っている。
結句「衣染めてむ」の「てむ」は、きっと〜してしまうだろうの意を表す。香りが衣に染みつくことを、色を染めることになぞらえている。
なほざり:深く心にかけないこと、いいかげん
そむ:色や香りを染みこませる
- 作者
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藤原冬嗣
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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いつの間に霞立つらん春日野の 雪だに解けぬ冬と見しまに
- 次の歌
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宿近く移して植ゑしかひもなく 待ち遠にのみにほふ花かな