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いつの間に霞立つらん春日野の
雪だに解けぬ冬と見しまに

歌の意味
いつの間に霞が立ったのだろうか。春日野は雪さえ解けない冬だと思って見ていたうちに。
鑑賞
巻第一 春歌上 15

詞書「女の宮仕へに罷り出でて侍りけるに、珍しきほどはこれかれ物言ひなどし侍りけるを、ほどもなく一人に逢ひ侍りにければ、睦月の朔日ばかりに言ひつかはしける」
 打ち解けない冬の野と思っていた春日野に、いつの間にか霞が立っていたと驚く歌である。誰にも心を許さないと思っていた女が、いつの間にか一人の男と結ばれていたことを、季節の移ろいに託して皮肉っている。
 詞書によれば、宮仕えに出た女に、初めのうちは何人もの男が言葉をかけていたが、女は間もなく一人の男と結ばれたので、正月の初めごろに言い送った歌である。詞書からは、女に言い寄っていた男の一人の詠と読める。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「いつの間に」は、気づかないうちに事が進んでいた驚きを表す。
 二句「霞立つらん」の「らん」は推量で、いつ霞が立ったのだろうと問いかけている。霞が立つことで、女がある男と結ばれたことをたとえている。ここで句切れとなる。
 三句「春日野の」は、大和の春日野を示し、女の身をたとえている。春日野は本巻の第八首や第十三首にも詠まれている。
 四句「雪だに解けぬ」の「だに」は、〜さえの意で、雪さえ解けない、すなわち女が誰にも打ち解けないさまをたとえている。
 結句「冬と見しまに」は、まだ冬だと思って見ていたうちに、の意である。倒置によって、油断していた間の出来事であったことを強めている。

みやづかへ:宮中に仕えること
あふ:男女が結ばれる
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
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