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昨日見し花の顔とて今朝見れば
寝てこそさらに色まさりけれ

歌の意味
昨日見た花の顔だと思って今朝見ると、一夜寝てからのほうが、いっそう色が美しくまさっていることだ。
鑑賞
巻第三 春歌下 128

詞書「琴笛などして遊び、物語などし侍りけるほどに、夜更けにければまかりとまりて」
 昨日見た藤の花を翌朝見ると、一夜寝たあとのほうがいっそう色が美しいと詠んだ歌である。藤を人の顔に見立て、泊まって一夜を過ごしたことで親しみがいっそう深まったことを、花の色に託して表している。
 詞書によれば、琴や笛を奏でて遊び、語り合っているうちに夜が更けたので、そのまま泊まって詠んだものである。第百二十八首から第百三十首までの三首は、前の三首と同じ宴が夜更けまで続き、定方が泊まった翌朝に詠み交わされた一連である。
 作者の「三条右大臣」は藤原定方である。藤原高藤の子で、右大臣に至った。三条に邸があったことからこう呼ばれる。藤原兼輔とはいとこにあたり、ともに紀貫之らの歌人を庇護した。

 初句「昨日見し」の「し」は過去の助動詞「き」の連体形で、昨日の宴で見た藤を示す。
 二句「花の顔とて」は、藤の花を人の顔に見立てたもので、昨日見た花の顔だと思って、の意である。本巻の第九十六首にも「花の面」の語がある。
 三句「今朝見れば」は、一夜明けて今朝見ると、の意である。
 四句「寝てこそさらに」の「こそ」は係助詞で、結句の已然形「けれ」と係り結びをなす。一夜寝たからこそ、と強調している。
 結句「色まさりけれ」の「まさる」はいっそう増す意で、色がいっそう美しくなったことを表す。次歌の第百二十九首は、一夜寝ることと藤の色を受けて返している。

まかりとまる:退出せずにそのまま泊まる
作者
藤原定方
出典
後撰和歌集
前の歌
棹させど深さも知らぬふちなれば 色をば人も知らじとぞ思ふ
次の歌
一夜のみ寝てし帰らば藤の花 心解けたる色見せんやは