名にし負はば逢坂山のさねかづら
人に知られでくるよしもがな
- 歌の意味
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逢坂山のさねかずらが「逢う」「さ寝」という名を持っているのなら、そのつるをたぐり寄せるように、人に知られずにあなたのもとへ来る手だてがあればよいのに。
- 鑑賞
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巻第十一 恋歌三 700
詞書「女につかはしける」
逢坂山のさねかずらが「逢う」「さ寝」の名を負っているなら、つるをたぐるように人に知られずに通う方法がほしい、と詠んだ歌である。地名と植物の名に恋の思いを託し、人目を忍んで逢いたいという願いを訴えている。
詞書によれば、女のもとへ送った歌である。恋歌三の巻頭歌で、小倉百人一首にも採られ、よく知られた一首である。
作者の「三条右大臣」は藤原定方である。内大臣藤原高藤の子で、右大臣にまで昇った。三条に邸があったことからこう呼ばれ、紀貫之や凡河内躬恒らの歌人を庇護したことでも知られる。
初句「名にし負はば」は、その名を持っているならば、の意で、「し」は強めの副助詞である。
二句「逢坂山の」の逢坂山は、山城の国と近江の国の境にある歌枕で、「逢ふ」の意を響かせている。本巻では第七百二十三首、第七百三十一首、第七百三十二首、第七百八十六首にも逢坂が詠まれ、逢うことの象徴として繰り返し現れる。
三句「さねかづら」は、つる性の植物で、「さ寝」の意を掛ける掛詞である。本巻の第七百八十七首も三句を「さねかづら」とし、四句に「くる」を置いており、同じ趣向を用いている。
四句「人に知られで」は、人に知られないで、の意で、「で」は打消の接続助詞である。
結句「くるよしもがな」は、来る手だてがあればよいのに、の意で、「くる」は「来る」と、つるを「繰る」を掛ける掛詞であり、「さねかづら」の縁語となっている。「もがな」は願望を表す。
さねかづら:モクレン科のつる性の植物、ビナンカズラ。「さ寝」の意を掛ける
くる:「来る」の意と、つるを「繰る」意を掛ける
よし:手だて、方法
- 作者
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藤原定方
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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かれずともいかが頼まむなでしこの 花は常盤の色にしあらねば
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恋しとはさらにも言はじ下紐の 解けむを人はそれと知らなむ