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女郎花花の名ならぬものならば
何かは君がかざしにもせん

歌の意味
女郎花が、女という花の名でないものならば、どうしてあなたの髪飾りにしようか。
鑑賞
巻第六 秋歌中 348

詞書「相撲の還饗の暮れつ方、女郎花を折りて、敦慶の親王のかざしに挿すとて」、また「年ごろ家の娘に消息通はし侍りけるを、女のために軽々しなど言ひて許さぬ間になん侍りける」
 女郎花が「女」という花の名を持つものでなかったら、どうしてあなたのかざしに挿そうか、その名ゆえに挿すのだと詠んだ歌である。女郎花の名に寄せて、自分の娘のことをほのめかしている。
 詞書によれば、相撲の節会の後の饗宴の夕暮れに、作者が女郎花を折って敦慶親王のかざしに挿すときに詠んだものである。後半の記述によれば、敦慶親王は長年作者の娘に手紙を通わせていたが、作者は娘のために軽々しいなどと言って、二人の仲を許さずにいたころのことである。敦慶親王は宇多天皇の皇子で、伊勢との間に中務をもうけた。
 作者の「三条右大臣」は藤原定方である。内大臣藤原高藤の子で、右大臣に至った。三条に邸があったことから三条右大臣と呼ばれ、紀貫之らを庇護した。小倉百人一首には「名にし負はば逢坂山のさねかづら」の歌が採られている。

 初句「女郎花」は、女郎花、の意で、作者の娘をなぞらえている。
 二句「花の名ならぬ」は、女という花の名でない、の意で、本巻の第三百四十五首の「花の名をのみ」と同じく、女郎花の名を詠んでいる。
 三句「ものならば」の「ば」は順接の仮定条件で、ものであるならば、の意である。
 四句「何かは君が」の「かは」は反語で、どうしてあなたの、の意である。
 結句「かざしにもせん」の「ん」は意志の助動詞「む」の連体形で、四句の「かは」と係り結びをなし、かざしにしようか、いやしない、の意である。名ゆえにこそかざしにすると、娘のことをほのめかしている。

かざし:髪や冠に挿す花や枝
すまひのかへりあるじ:相撲の節会の後、近衛大将が自邸で催した饗宴
せうそこ:手紙、便り
作者
藤原定方
出典
後撰和歌集
前の歌
女郎花匂ふ盛りを見る時ぞ わが老いらくはくやしかりける
次の歌
女郎花折りけん袖のふしごとに 過ぎにし君を思ひ出でやせし