古典和歌stream

人の世の思ひにかなふものならば
我が身は君に後れましやは

歌の意味
人の命が思いどおりになるものならば、我が身があなたに先立たれて後に残ることなどあっただろうか。
鑑賞
巻第二十 慶賀歌 1398

詞書「重ねてつかはしける」
 人の世が思いどおりになるものなら、我が身は君に後れることがあっただろうか、と詠んだ歌である。人の命が思うようになるのなら、主君に先立たれて生き残ることはなかったと、先帝に後れた身の嘆きを重ねて送っている。
 詞書によれば、前の贈答に重ねて藤原兼輔に送った歌である。歌の「君」は先帝の醍醐天皇を指すとみられる。
 作者の「三条右大臣」は藤原定方である。藤原高藤の子で、右大臣に至り、三条右大臣と呼ばれた。姉妹の胤子は醍醐天皇の生母で、天皇の叔父にあたる。小倉百人一首には「名にし負はば逢坂山のさねかづら」の歌が採られている。

 初句「人の世の」は、人の命の、の意である。
 二句「思ひにかなふ」は、思いどおりになる、の意である。
 三句「ものならば」は、ものであるならば、の意で、「ば」は仮定を表す。
 四句「我が身は君に」は、我が身はあなたに、の意で、「君」は先帝を指すとみられる。
 結句「後れましやは」は、後に残されることがあっただろうか、の意で、「まし」は反実仮想、「やは」は反語を表す。

おくる:先立たれて後に残る
作者
藤原定方
出典
後撰和歌集
前の歌
泣く涙ふりにし年の衣手は 新しきにも変はらざりけり
次の歌
寝ぬ夢に昔の壁を見つるより うつつにものぞ悲しかりける