寝ぬ夢に昔の壁を見つるより
うつつにものぞ悲しかりける
- 歌の意味
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眠ってもいないのに夢のように、亡き妻が書きつけた昔の壁を見てからというもの、現実に物事が悲しく思われることだ。
- 鑑賞
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巻第二十 慶賀歌 1399
詞書「妻の身まかりてのち、住み侍りける所の壁に、かの侍りける時書きつけて侍りける手を見侍りて」
寝てもいない夢のように昔の壁を見てから、現実に物が悲しい、と詠んだ歌である。亡き妻が生前に壁に書きつけた筆跡を見て、夢を見ているようでありながら、それが現実であることにいっそう悲しみが募ると詠んでいる。
詞書によれば、妻が亡くなったのち、住んでいた所の壁に、妻が生前に書きつけていた筆跡を見て詠んだ歌である。
作者の「兼輔朝臣」は藤原兼輔である。藤原利基の子で、中納言に至った。賀茂川の堤に邸があったことから堤中納言と呼ばれ、三十六歌仙の一人に数えられる。紫式部の曾祖父にあたり、小倉百人一首には「みかの原わきて流るるいづみ川」の歌が採られている。
初句「寝ぬ夢に」は、寝てもいないのに見る夢のように、の意で、亡き妻の筆跡を見る思いをいう。
二句「昔の壁を」は、妻の生前の筆跡が残る壁を、の意である。
三句「見つるより」は、見てからというもの、の意である。
四句「うつつにものぞ」は、現実に物事が、の意で、初句の「夢」と対をなしている。「ぞ」は強意の係助詞である。
結句「悲しかりける」は、悲しく思われることだ、の意で、四句の「ぞ」を受けて連体形「ける」で結ぶ係り結びとなっている。本巻の第千四百四首も下の句を「ものぞ悲しかりける」で結んでいる。
て:書いた文字、筆跡
うつつ:現実、目が覚めている状態
- 作者
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藤原兼輔
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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人の世の思ひにかなふものならば 我が身は君に後れましやは
- 次の歌
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夕されば寝に行く鴛のひとりして 妻恋ひすなる声の悲しさ