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折るからにわが名は立ちぬ女郎花
いざ同じくは花々に見む

歌の意味
折っただけで、私の浮き名は立ってしまった。女郎花よ、さあ、どうせ同じことなら、華やかに存分に見よう。
鑑賞
巻第六 秋歌中 274

詞書「同じ御時の女郎花合に」
 女郎花を折っただけで、女に手を出したと浮き名が立ってしまった、それならいっそ存分に花を眺めようと詠んだ歌である。「女郎花」の名の「女」に寄せて、浮き名に開き直る機知を表している。
 詞書によれば、前歌と同じ宇多天皇の時代に催された女郎花合で詠まれたものである。女郎花合は、左右に分かれて女郎花の花と歌の優劣を競う催しである。本巻の第二百七十四首から第二百七十六首までは、同じ女郎花合の歌が三首並んでいる。
 作者の「藤原おきかぜ」は藤原興風である。藤原道成の子で、相模掾などを務めた。管弦にも優れ、三十六歌仙の一人である。小倉百人一首には「誰をかも知る人にせむ高砂の」の歌が採られている。

 初句「折るからに」の「からに」は、するとすぐに、の意の接続助詞で、折っただけで、の意である。
 二句「わが名は立ちぬ」の「名」は評判、うわさの意で、浮き名が立ってしまった、の意である。「ぬ」は完了の助動詞で、ここで句切れとなる。
 三句「女郎花」は、秋の七草の一つで、その名の「女」から女性になぞらえて詠まれる。本巻ではこのあとも女郎花を詠む歌が数多く並んでいる。
 四句「いざ同じくは」の「いざ」は誘いかける語、「同じくは」は、どうせ同じことなら、の意である。
 結句「花々に見む」の「花々に」は、華やかに、存分に、の意で、「花」を重ねている。「む」は意志の助動詞で、華やかに見よう、の意である。

をみなへし:秋の七草の一つ、名の「女」から女性になぞらえて詠まれる
をみなへしあはせ:左右に分かれて女郎花の花と歌の優劣を競う催し
な:評判、うわさ
作者
藤原興風
出典
後撰和歌集
前の歌
浦近く立つ秋霧は藻塩焼く 煙とのみぞ見えわたりける
次の歌
秋の野の露に置かるる女郎花 払ふ人なみ濡れつつや経る