古典和歌stream

臥して寝る夢路にだにも逢はぬ身は
なほあさましき現とぞ思ふ

歌の意味
横になって眠る夢の中でさえあなたに逢えない我が身は、やはり夢ではなく嘆かわしい現実なのだと思う。
鑑賞
巻第十 恋歌二 620

詞書「人につかはしける」
 横になって眠る夢路でさえ逢えない我が身は、やはり嘆かわしい現実なのだと思う、と詠んだ歌である。現実はもとより夢の中でさえ恋しい人に逢えない、救いのない嘆きを表している。
 詞書によれば、ある人に送った歌である。
 作者の「紀良谷雄朝臣」は紀長谷雄と考えられる。紀貞範の子で、菅原道真に学び、文章博士を経て中納言にまで昇った。漢詩文にすぐれた学者として知られる。

 初句「臥して寝る」は、横になって眠る、の意である。
 二句「夢路にだにも」は、夢の中でさえも、の意で、「だに」は最小限のものを挙げる副助詞である。
 三句「逢はぬ身は」は、逢うことのできない我が身は、の意である。
 四句「なほあさましき」は、やはり嘆かわしい、の意で、二句の「夢路」と結句の「現」が対をなしている。
 結句「現とぞ思ふ」は、現実なのだと思う、の意で、「ぞ」は強めの係助詞、連体形「思ふ」で結ぶ係り結びとなっている。

ゆめぢ:夢の中で行き通う道、夢
うつつ:現実
作者
紀長谷雄
出典
後撰和歌集
前の歌
東路の佐野の舟橋かけてのみ 思ひわたるを知る人のなき
次の歌
天の戸をあけぬあけぬと言ひなして 空鳴きしつる鳥の声かな