つまにおふることなし草を見るからに
頼む心ぞ数まさりける
- 歌の意味
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軒端に生えるという言無し草のように、言葉もないまま結んで返された紙を見るにつけても、あなたを妻にと頼みにする心が、いっそうまさることだ。
- 鑑賞
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巻第十 恋歌二 697
詞書「人のもとに初めて文つかはしたりけるに、返事はなくてただ紙を引き結びて返したりければ」
軒端に生える言無し草のような言葉のない返事を見るにつけても、妻にと頼む心がいっそうまさる、と詠んだ歌である。返事の言葉がなく紙を結んで返されたことを、かえって契りを結ぶしるしと受けとめ、思いを強めている。
詞書によれば、ある人に初めて手紙を送ったところ、返事はなく、ただ紙を引き結んで返してきたので詠んだ歌である。次歌の第六百九十八首、第六百九十九首とともに、同じ相手との贈答が続く。
作者の「源もろあきらの朝臣」は源庶明である。宇多天皇の孫で、斉世親王の子にあたり、中納言を務めた。
初句「つまにおふる」の「つま」は、軒の端の意の「つま」と、「妻」を掛けた掛詞で、軒端に生える、の意である。
二句「ことなし草を」は、言無し草を、の意で、「ことなし」に、言葉のない返事の意を掛けている。
三句「見るからに」は、見るにつけても、見るとすぐに、の意である。
四句「頼む心ぞ」は、頼みにする心が、の意で、「ぞ」は強めの係助詞である。
結句「数まさりける」は、いっそうまさることだ、の意で、四句の「ぞ」を受けて連体形「ける」で結ぶ係り結びとなっている。
つま:軒の端の意と、「妻」を掛ける
ことなしぐさ:軒端などに生える草、「言無し」を掛ける
ひきむすぶ:紙などを引き結ぶ
- 作者
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源庶明
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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行く水の瀬ごとにふまんあとゆゑに 頼むしるしをいづれとか見ん
- 次の歌
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おく露のかかる物とは思へども かれせぬ物はなでしこの花