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思ひ寝の夢と言ひてもやみなまし
なかなか何にありと知りけん

歌の意味
思い寝の夢だと言ってすませてしまえばよかった。なまじどうして、あなたが本当に帰っていたと知ってしまったのだろう。
鑑賞
巻第十二 恋歌四 872

詞書「かくてつかはしたりければ、千里見侍りて、なほざりにまことにをととひなん帰りまうで来しかど、心地の悩ましくてなんありつるとばかり言ひおくりて侍りければ、重ねてつかはしける」
 思い寝の夢だと言ってすませればよかった、なまじどうして本当にいたと知ってしまったのだろう、と詠んだ歌である。夢だと思えばあきらめもついたのに、男が本当に戻っていながら訪れなかったと知り、かえってつらさが増したことを嘆いている。
 詞書によれば、前歌の第八百七十一首を送ったところ、千里はそれを見て、おざなりに、本当は一昨日帰って来ていたが気分がすぐれなかった、とだけ言い送ってきたので、重ねて送った歌である。前歌に続く、大江千里に思いを寄せた女の歌である。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「思ひ寝の」は、思いながら寝る、の意で、恋しく思いながら寝て見る夢を言う。
 二句「夢と言ひても」は、夢だと言って、の意で、前歌の「夢のしるし」を受けている。
 三句「やみなまし」は、すませてしまえばよかった、の意で、「まし」は反実仮想を表す。ここで句切れとなる。
 四句「なかなか何に」は、なまじどうして、の意である。
 結句「ありと知りけん」は、いたと知ってしまったのだろう、の意で、「けん」は過去の原因を推量し、四句の「何に」を受けて連体形で結んでいる。

おもひね:人を思いながら寝ること
やむ:そのままで終わる
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
はかなかる夢のしるしにはかられて うつつに負くる身とやなりなん
次の歌
いつしかの音になきかへり来しかども 野辺の浅茅は色づきにけり