厭はれて帰りこしぢの白山は
入らぬに迷ふものにぞありける
- 歌の意味
-
嫌われて帰ってきた越路の白山は、山に分け入りもしないのに道に迷うものであったよ。
- 鑑賞
-
巻第十四 恋歌六 1063
詞書「女につかはしける」
嫌われて帰ってきた越路の白山は、入りもしないのに迷うものだった、と詠んだ歌である。女に拒まれて帰る道を、雪深い越路の白山にたとえ、山に分け入ったわけでもないのに心が迷ってしまう恋の惑いを詠んでいる。
詞書によれば、女に送った歌である。本巻の第千六十六首も、闇に迷う心を詠んでいる。
作者の「源よしの朝臣」は源善とされる。参議源舒の子で、右近衛中将に至ったが、昌泰の変に連座して出雲権守に左遷された。
初句「厭はれて」は、嫌われて、の意で、「れ」は受け身の助動詞である。
二句「帰りこしぢの」は、帰って来た道の、の意で、「こしぢ」に「来し路」と北陸道の「越路」を掛けている。
三句「白山は」は、加賀国の白山は、の意で、越路の名高い山として詠まれている。
四句「入らぬに迷ふ」は、入りもしないのに迷う、の意で、山に分け入れば迷うのが常であるのに、入る前から迷うという逆説になっている。本巻の第千六十六首の四句「闇に迷ふを」とも響き合っている。
結句「ものにぞありける」は、ものであったよ、の意で、係助詞「ぞ」を受けて連体形「ける」で結ぶ係り結びとなっている。
こしぢ:来し路の意と、北陸道の越路を掛ける
しらやま:加賀国の白山
いとふ:嫌って避ける
- 作者
-
源善
- 出典
-
後撰和歌集
- 前の歌
-
夕されば思ひぞ繁き待つ人の 来むや来じやの定めなければ
- 次の歌
-
人浪にあらぬわが身は難波なる 葦のねのみぞ下になかるる