いづくとて尋ね来つらん玉かづら
我は昔の我ならなくに
- 歌の意味
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どこだと思って尋ねて来たのだろうか、玉かづらよ。私はもう昔の私ではないのに。
- 鑑賞
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巻第十八 雑歌四 1253
詞書「中将にて内にさぶらひける時、あひ知りたりける女蔵人の曹司に、壺胡簶、老懸を宿し置きて侍りけるを、にはかに事ありて遠き所にまかり侍りけり、この女のもとよりこの老懸をおこせて、あはれなることなど言ひて侍りける返事に」
どこを当てに尋ねて来たのか、玉かづらよ、私は昔の私ではないのに、と詠んだ歌である。都で身につけていた老懸を遠い地で受け取り、もはや昔の身ではないと、境遇の変わりようを嘆いている。
詞書によれば、作者が近衛中将として宮中に仕えていたころ、親しくしていた女蔵人の局に壺胡簶や老懸を預け置いていたが、急な事件があって遠い所に下ることになった。その女がこの老懸を送ってきて、しみじみとした言葉を添えてきたので、その返事として詠んだ歌である。詞書の「にはかに事ありて」は、菅原道真の左遷に連座して地方へ下されたことを指すとみられる。
作者の源善は、原文に「源善朝臣」とあり、平安時代前期の官人で、近衛中将を務めたが、菅原道真の失脚に連座して地方へ左遷されたと伝えられる。
初句「いづくとて」は、どこだと思って、の意である。
二句「尋ね来つらん」は、尋ねて来たのだろうか、の意で、「らん」は現在の推量を表す。ここで句切れとなる。
三句「玉かづら」は、玉で飾った髪飾りの美称で、ここは送られてきた老懸を玉かづらと呼びかけている。
四句「我は昔の」は、私はもう昔の、の意で、結句の「我」と同じ語を重ねて、昔と今の我が身を対比している。
結句「我ならなくに」は、私ではないのに、の意で、「なくに」は逆接の詠嘆を表す。
たまかづら:玉で飾った髪飾り、ここは送られた老懸を呼ぶ
おいかけ:武官が冠の左右につけた飾り
つぼやなぐひ:壺の形をした矢入れ
にょくらうど:宮中に仕える下級の女官、女蔵人
ざうし:宮中で女房などに与えられた部屋、局
- 作者
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源善
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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陸奥の尾駮の駒も野飼ふには 荒れこそまされなつくものかは
- 次の歌
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朝ごとに見し都路の絶えぬれば 事あやまりに問ふ人もなし