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人浪にあらぬわが身は難波なる
葦のねのみぞ下になかるる

歌の意味
人並みでない私の身は、難波の葦の根が水の下を流れるように、人知れず声をひそめて泣くばかりだ。
鑑賞
巻第十四 恋歌六 1064

詞書「題しらず」
 人並みでない私の身は、難波の葦の根のように、ひそかに泣いてばかりいる、と詠んだ歌である。人並みに恋を打ち明けることもできない身を、水の下に隠れた葦の根にたとえ、人知れず泣く悲しみを詠んでいる。
 本巻の第千二十二首も難波を詠んでおり、難波の水辺に寄せた恋の歌が重ねられている。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。
 なお原文の作者表記は「よみ人も」とあり、前後の歌の例から「よみ人しらず」の意と解する。

 初句「人浪に」は、人並みに、の意で、「浪」の字に三句の難波の波を響かせている。
 二句「あらぬわが身は」は、そうではない私の身は、の意である。
 三句「難波なる」は、摂津国の難波にある、の意である。
 四句「葦のねのみぞ」は、葦の根ばかりが、の意で、「ね」に葦の「根」と泣く「音」を掛けている。「ぞ」は強めの係助詞である。
 結句「下になかるる」は、水の下に流れている、の意で、「なかるる」に「流るる」と「泣かるる」を掛け、四句の「ぞ」を受けて連体形で結ぶ係り結びとなっている。

ひとなみ:人並み。波を響かせる
ね:葦の根と、泣く音を掛ける
ながる:流れる意と、泣かるる意を掛ける
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
厭はれて帰りこしぢの白山は 入らぬに迷ふものにぞありける
次の歌
白雲のゆくべき山は定まらず 思ふ方にも風は寄せなん