古典和歌stream

白雲のゆくべき山は定まらず
思ふ方にも風は寄せなん

歌の意味
白雲が行くはずの山は定まっていない。せめて私の思う方へも、風が雲を吹き寄せてほしい。
鑑賞
巻第十四 恋歌六 1065

詞書「題しらず」
 白雲の行くべき山は定まっていないのだから、せめて思う方へ風が吹き寄せてほしい、と詠んだ歌である。どこへ行くとも知れない白雲に相手の心をたとえ、その心が自分のほうへ向くよう風に願っている。
 本巻の第九百九十八首、第千二十五首が雲居によって遠く隔たった相手を詠んだのに対し、本歌は行方の定まらない白雲によって、まだどこへも向いていない相手の心を詠んでいる。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。
 なお原文の作者表記は「よみ人も」とあり、前歌と同じく「よみ人しらず」の意と解する。

 初句「白雲の」は、白い雲の、の意で、行方の定まらない相手の心をたとえている。
 二句「ゆくべき山は」は、行くはずの山は、の意である。
 三句「定まらず」は、定まっていない、の意で、ここで句切れとなる。
 四句「思ふ方にも」は、私の思う方へも、の意である。
 結句「風は寄せなん」は、風が吹き寄せてほしい、の意で、「なん」は他にあつらえ望む終助詞である。

かた:方角、方面
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
人浪にあらぬわが身は難波なる 葦のねのみぞ下になかるる
次の歌
世の中になほありあけの月なくて 闇に迷ふを訪はぬつらしな