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世の中になほありあけの月なくて
闇に迷ふを訪はぬつらしな

歌の意味
この世になお生きながらえてはいるが、有明の月もなく、闇に迷っている私を訪ねてくれないのは、薄情なことよ。
鑑賞
巻第十四 恋歌六 1066

詞書「題しらず」
 世の中になお生きてはいるが、有明の月もなく闇に迷っているのに、訪ねてくれないのはつらい、と詠んだ歌である。「ありあけ」に生き長らえている意を重ね、照らしてくれる月のような相手の訪れもなく、闇に迷う心を嘆いている。
 本巻の第千三十二首も「有明の月」を詠み、待つ人に欺かれる嘆きを詠んでいた。第千六十三首の迷う心とも響き合っている。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。
 なお原文の作者表記は「よみ人も」とあり、前の二首と同じく「よみ人しらず」の意と解する。

 初句「世の中に」は、この世の中に、の意である。
 二句「なほありあけの」は、なお生きながらえている、有明の、の意で、「あり」に生きている意の「在り」と「有明」を掛けている。本巻の第千三十二首の三句にも「有明の」が詠まれている。
 三句「月なくて」は、月もなくて、の意で、照らしてくれる相手の訪れがないことをたとえている。
 四句「闇に迷ふを」は、闇の中で迷っているのに、の意で、「を」は逆接の接続助詞である。本巻の第千六十三首の四句「入らぬに迷ふ」とも響き合っている。
 結句「訪はぬつらしな」は、訪ねてくれないのはつらいことよ、の意で、「な」は詠嘆の終助詞である。

ありあけ:月が空に残ったまま夜が明けること。また、その頃の月。「在り」を掛ける
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
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