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身に寒くあらぬものからわびしきは
人の心の嵐なりけり

歌の意味
身に寒いわけではないのに、わびしく感じられるのは、人の心に吹く嵐であったのだ。
鑑賞
巻第十七 雑歌三 1246

詞書「心にもあらぬことを言ふころ、男の扇に書きつけ侍りける」
 身に寒いわけではないのにわびしいのは、人の心の嵐であった、と詠んだ歌である。本心でないことを言う男の冷たさを、身にしみる嵐にたとえ、心に吹く冷たい風のわびしさを詠んでいる。
 詞書によれば、男が本心にもないことを言うころ、男の扇に書きつけた歌である。次歌も同じ折の歌で、二首は一連となっている。
 作者の「土左」は土佐と呼ばれた女房で、詳しい伝は未詳である。

 初句「身に寒く」は、身に寒く、の意である。
 二句「あらぬものから」は、ないのに、の意で、「ものから」は逆接を表す。
 三句「わびしきは」は、わびしいのは、の意である。
 四句「人の心の」は、あの人の心の、の意で、男の心をいう。次歌の二句にも「人の心」が詠まれている。
 結句「嵐なりけり」は、嵐であったのだ、の意で、「なりけり」は気づきを表す。本巻の第千二百十一首も「嵐」を詠んでいる。

わぶ:心細く思う、つらく思う
作者
土佐
出典
後撰和歌集
前の歌
白雲の来宿る峰の小松原 枝しげけれや日の光見ぬ
次の歌
ながらへば人の心も見るべきを 露の命ぞ悲しかりける