ささがにの空に巣がける糸よりも
心細しや絶えぬと思へば
- 歌の意味
-
蜘蛛が空中に巣をかける細い糸よりも、なお心細いことだ。あの人との仲が絶えてしまったと思うと。
- 鑑賞
-
巻第十八 雑歌四 1295
詞書「つらかりける男のはらからのもとにつかはしける」
蜘蛛が空に巣をかける糸よりも心細い、仲が絶えたと思うと、と詠んだ歌である。冷たくなった男との仲を、空中に張られた細い蜘蛛の糸にたとえ、男の兄弟に心細さを訴えている。
詞書によれば、冷たくなった男の兄弟のもとに送った歌である。次歌はその返しで、二首は贈答の一組となっている。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。原文の作者表記は「よみ人も」とあるが、ここでは「よみ人しらず」として扱う。
初句「ささがにの」は、蜘蛛の、の意で、蜘蛛やその糸を表す語である。
二句「空に巣がける」は、空中に巣をかける、の意である。
三句「糸よりも」は、蜘蛛の糸よりも、の意である。
四句「心細しや」は、心細いことだ、の意で、「細し」は「糸」の縁語、「や」は詠嘆を表す。ここで句切れとなり、結句と倒置になっている。
結句「絶えぬと思へば」は、絶えてしまったと思うと、の意で、「絶え」も「糸」の縁語である。次歌の二句「絶えぬと見ゆる」に受けられている。
ささがに:蜘蛛、また蜘蛛の糸
すがく:蜘蛛が巣をかける
はらから:兄弟姉妹
- 作者
-
よみ人しらず
- 出典
-
後撰和歌集
- 前の歌
-
たとへ来る露と等しき身にしあらば 我が思ひにも消えんとやする
- 次の歌
-
風吹けば絶えぬと見ゆる蜘蛛のいも またかきつかでやむとやは聞く