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眺むるに物思ふ事の慰むは
月は憂き世の外よりや行く

歌の意味
月を眺めていると物思いが慰められるのは、月がこのつらい世の外を通って行くからだろうか。
鑑賞
巻第八 雑歌上 434

詞書「妻に後れて侍りける頃、月を見侍りて」
 月を眺めると物思いが慰められるのは、月がこのつらい世の外を通って行くからだろうかと詠む歌である。詞書から、妻に先立たれた悲しみの中で月を見て詠んだ歌とわかる。現世の憂さから離れた月の清らかさに、亡き妻を思う心のよりどころを見いだしている。前の二首が月によって物思いが生まれると詠んだのに対し、この歌は月によって物思いが慰められると詠み、趣向を反転させている。
 作者の「大江為基」は、大江斉光の子とされる平安時代中期の官人で、文章道に学んだ人物である。本巻の第四百六十九首の詞書にも、鏡を売りに来た女の話の中にその名が見える。

 初句「眺むるに」は、もの思いにふけって眺めていると、の意で、前々歌の結句「眺めしつらん」と同じ語を用いている。
 二句「物思ふ事の」は、物思いをすることが、の意で、第四百三十二首の「物思ふ」、前歌の「思ふ事」を受け継いでいる。
 三句「慰むは」は、慰められるのは、の意である。
 四句「月は憂き世の」は、月はこのつらい世の、の意で、「憂き世」は亡き妻を失った作者の嘆きを映している。
 結句「外よりや行く」は、外を通って行くのだろうか、の意で、「や」は疑問の係助詞、結びは連体形の「行く」である。月の道筋を想像して、慰めの理由を推し量っている。

めにおくる:妻に先立たれる
うきよ:つらいことの多いこの世
作者
大江為基
出典
拾遺和歌集
前の歌
思ふ事有りとはなしに久方の 月夜となれば寝られざりけり
次の歌
かくばかり経がたく見ゆる世の中に うらやましくもすめる月かな