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二つなき心は君におきつるを
又ほどもなく恋しきやなぞ

歌の意味
二つとない私の心は、起きて別れるときにあなたのもとに置いてきたのに、また間もなく恋しいのはどうしてなのか。
鑑賞
巻第十二 恋歌二 721

詞書「本院の東の対の君にまかり通ひて、あしたに」
 ただ一つの心はあなたのもとに置いてきたのに、間もなくまた恋しくなるのはなぜかと詠む歌である。詞書から、本院の東の対に住む女君のもとに通った翌朝に贈った後朝の歌とわかる。「おき」に心を「置き」と床から「起き」を掛け、心を置いてきたはずなのに恋しさが残る不思議を表している。前歌の第七百二十首と同じ結句「恋しきやなぞ」を持ち、本院の女君に贈った後朝の歌が二首並んでいる。
 作者の「大納言源きよかけ」は源清蔭である。陽成天皇の皇子で、臣籍に降って源の姓を賜り、大納言に至った。

 初句「二つなき」は、二つとない、ただ一つの、の意である。
 二句「心は君に」は、私の心はあなたのもとに、の意である。
 三句「おきつるを」は、「おき」が心を「置き」と、床から「起き」を掛ける掛詞である。「つる」は完了の助動詞、「を」は逆接を表す。
 四句「又ほどもなく」は、また間もなく、の意で、前歌の第七百二十首の四句「ひるまばかりに」と、別れて間もない時を詠む点で共通している。
 結句「恋しきやなぞ」は、恋しいのはどうしてか、の意で、前歌の第七百二十首の結句と同じ句である。

おく:心を「置く」意と、床から「起く」意を掛ける
たい:対。寝殿造りで、寝殿の東西や北に設けた建物
作者
源清蔭
出典
拾遺和歌集
前の歌
朝まだき露分け来つる衣手の ひるまばかりに恋しきやなぞ
次の歌
いつしかと暮れを待つ間の大空は 曇るさへこそうれしかりけれ