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さても猶まがきの島のありければ
立ち寄りぬべく思ほゆるかな

歌の意味
それでもやはり、籬の島がまだ残っていたので、あなたの家の籬にも立ち寄ってしまいそうに思われることだ。
鑑賞
巻第十 恋歌二 666

詞書「定国の朝臣の御息所、清蔭の朝臣と、陸奥にある所々を尽くして歌に詠み交はして、今は詠むべき所なしと言ひければ」
 それでもまだ籬の島が残っていたから、あなたの家の籬にも立ち寄りたくなる、と詠んだ歌である。歌枕を詠み尽くしたという相手に、残っていた地名に託して、相手のもとを訪れたい思いを伝えている。
 詞書によれば、藤原定国の娘である御息所が、作者と陸奥の国の名所を尽くして歌を詠み交わし、もう詠むべき所はないと言ったので詠んだ歌である。
 作者の源清蔭は、陽成天皇の皇子で、臣籍に降って大納言にまで昇った。

 初句「さても猶」は、それでもやはり、の意である。
 二句「まがきの島の」の「まがき」は、陸奥の国の塩竈の浦にある歌枕の「籬の島」と、家の垣根の意の「籬」を掛けた掛詞である。
 三句「ありければ」は、まだ残っていたので、の意である。
 四句「立ち寄りぬべく」は、立ち寄ってしまいそうに、の意で、「寄る」は島の縁語である。
 結句「思ほゆるかな」は、思われることだ、の意で、「かな」は詠嘆の終助詞である。

まがき:陸奥の国の「籬の島」と、家の垣根の意の「籬」を掛ける
みやすどころ:天皇の寵愛を受けた女御や更衣
作者
源清蔭
出典
後撰和歌集
前の歌
思はんと頼めし人はありと聞く 言ひし言の葉いづち往にけん
次の歌
これはかくうらみ所もなきものを うしろめたくは思はざらなん