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たちよらぬ春の霞を頼まれよ
花のあたりと見ればなるらん

歌の意味
立ち寄らない春の霞を、かえって頼みに思ってください。そこが花のあたりだと見て、遠慮しているからなのでしょう。
鑑賞
巻第三 春歌下 114

詞書「返し」
 前歌で、花にかこつけてさえ立ち寄らないと恨まれたのに対し、立ち寄らない霞をかえって頼みにしてほしい、花のあたりだと見て遠慮しているのだから、と返した歌である。自らを花を隠す霞に、相手を花になぞらえ、訪れないことを心遣いだと言いなしている。
 前歌の第百十三首と贈答をなす。
 作者の源清蔭は陽成天皇の皇子で、臣籍に下って源の姓を賜り、大納言に至った。

 初句「たちよらぬ」は、前歌の第百十三首の結句をそのまま受けている。「たち」は、霞が「立つ」意と「立ち寄る」意を掛けた掛詞である。
 二句「春の霞を」は、立ち寄らない自分を、春の霞になぞらえている。
 三句「頼まれよ」は、頼みに思ってください、の意で、命令の形で相手に求めている。ここで句切れとなる。
 四句「花のあたりと」は、花のあるあたり、すなわち相手の住まいを花になぞらえたものである。霞は花を隠すものとされ、巻第二の第七十三首にも霞が花の色を閉じ込める趣向が見える。
 結句「見ればなるらん」の「らん」は原因を推量する助動詞で、花のあたりと見て遠慮しているからだろう、と立ち寄らない理由を述べている。

たちよる:立ち寄る意に、霞が「立つ」意を掛ける
作者
源清蔭
出典
後撰和歌集
前の歌
我をこそ訪ふに憂からめ春霞 花につけてもたちよらぬかな
次の歌
君見よと尋ねて折れる山桜 古りにし色と思はざらなん