年ごとに咲きは変はれど梅の花
あはれなる香は失せずぞありける
- 歌の意味
-
年ごとに咲く花は変わるけれども、梅の花の、しみじみと心ひかれる香りは失われずにあることだ。
- 鑑賞
-
巻第十六 雑春歌 1013
詞書「題しらず」
年ごとに咲く花は変わっていくけれども、梅の花のしみじみとした香りは変わらずに残っていると詠む歌である。移り変わる花の姿と、変わらない香りとを対比し、梅の香への深い愛着を表している。本巻の第千二首が新しい年にも変わらない鶯の声を詠んだのと、年が改まっても変わらないものを見いだす点で通じている。
初句「年ごとに」は、毎年、の意で、本巻の第千五十七首、第千五十八首の初句「年ごとに」と同じ句を共有している。
二句「咲きは変はれど」は、咲く花は変わるけれども、の意で、「ど」は逆接の接続助詞である。
三句「梅の花」は、梅の花の、の意である。
四句「あはれなる香は」は、しみじみと心ひかれる香りは、の意である。
結句「失せずぞありける」は、失われずにあることだ、の意で、係助詞「ぞ」を受けて過去の助動詞「けり」の連体形「ける」で結ぶ係り結びである。本巻の第千二首の結句「変はらざりけり」と、変わらないものを見いだす点で通じている。
か:香。香り
- 作者
-
よみ人しらず
- 出典
-
拾遺和歌集
- 前の歌
-
数ふれどおぼつかなきを我が宿の 梅こそ春の数を知るらめ
- 次の歌
-
梅が枝をかりに来て折る人やあると 野辺の霞は立ち隠すかも